会社員をしながら有償の依頼を受けるようになって数年 勤めていた会社が解散したことを機に、カメラマンとして専業で生活している。
といっても、会社員は体調の懸念もあり、フルタイムではなく
朝から昼までの半日だけで、昼食は家に帰って食べるくらいの緩さ。
それでも技能職(会計・経理系、およびPC関係)だったこともあり
短時間正社員として有給も社会保険も賞与もきちんと付いていた。
つまり、保険や年金は会社も払ってくれており
後は税金と併せて給与からの天引きだったので
手取り給与とおおまかな賞与の計算だけで、生活の為の計算は楽だった。
半日勤務なので給与の額は決して多くなかったが それでも少しずつでも貯蓄をすることはできたしささやかながら趣味も楽しめた。
フリーになるとそうもいかない。
毎月安定した収入があるわけではないし
体調崩して休んでいる間は収入ゼロ、実質はマイナス、ということになる。
しかも、国民年金、国民健康保険を収め
さらに昨年の所得にかかる所得税とそこからの住民税という合わせ技もある。
そこで私はカメラマン専業になる時に「最低目標額」を計算しておいた。
要するに、月これだけあれば各種支払いを済ませて何とか生活できるという基準額だ。
これの1.5倍が大まかな目標額、2倍を越えればよく頑張った、と言える額。
さて、今年も2ヶ月(なんと6分の1)が終わろうとしているので少し振り返ってみると
売上(収入)ベースで最低目標と比較し
1月は2.5倍、2月は現時点でおよそ2.2倍となっている。
当たり前だがこれが1年間通してずっと続くとは思えないが
とりあえずは良かったと思えるレベルだ。
とはいえ、売上が増えれば変動費も増えるし、ちょっと余裕があるうちに
機材を買い増ししておこうとか、メンテに出しておこうなどと考えるので
結局のところ、手元に残る分まで2倍になるということではない。
ましてや今月来月、ニコンは
120-300mm f2.8という超目玉レンズに始まり
最新フラッグシップ機のD6、Zマウント初の望遠ズーム Z 70-200mm f/2.8Sなどが出て
それをすべて予約してしまったので、既に経済的には瀕死の有様だ。
加えて言えば、PCも買い換えることになったので できれば最低目標額の10倍は稼ぎたい所である。
話が逸れた。
さて、カメラマンの仕事といっても色々とある。
私の場合、雑誌や新聞社に雇われたりしているわけでも
有名カメラマンとして講師やセミナーの仕事が舞い込んでくるわけでもない。
芸術写真家のように作品集が出るわけでもないし、展示販売もしていない。
ただ依頼に沿って撮るだけ。
言うなれば「シャッターボタン押し屋さん」くらいの話である。
とはいえそれじゃどうお金が発生するのか分かりづらい、もう少し細かく言おう。
あくまで私の場合は、という前置きにはなるが
仕事と報酬は、大別すると下記のように幾つかパターンがある。
繰り返しになるが、あくまで私がカメラを使って収入を得たパターンの大別である。
・シャッター係(データ引き渡し)
1日いくら。イベントやスポーツ系の撮影で多い形式。
会場で撮影はするが、各種権利が絡むので撮ったデータは基本的にすべて渡す
(以前は現場でデータカード渡されて終わったら返す方式もあり
自分がどんなデータ撮ったかも観れないこともあったが最近はそこまでのは少ない。
データを全て送り、こちらも同じデータを所有はできるが
使用する前に許可を得なければならない、といった形式が多い)
ほぼ著作権を放棄したような形で心情としては面白くはないが
仕事としては大きい。撮り直しが効かないので機材への信頼度が大事
下の方に出てくる販売系でこのパターンもある。
(販売作品のカメラマンとして1日・1回の撮影でいくらというギャラ)
・シャッター係(データ納入)
上記のデータ納入版。
こっちがデータを持ち帰り
チェックしてミスショットを消したり、現像などで仕上げてから渡す。
権利の扱いは契約によってまちまち。
こちらが相手に使用許可を与え(ルールを決め)て渡すパターンと
基本的に相手仕上げたデータを納入するまでが仕事で
後は基本的に相手が使用する。こちらは使用する場合は確認や許可がいる。
最初にきちっと話し合っておかないと最悪揉めてしまうので
けっこう気を使う方式。
しかし良いショットだけ選んで渡せるので、その点はありがたい。
現像に関しては、完全に主観や好みが入ってしまうので
その点は何度か確認しながら進めるか、オーソドックスにだけしておいて
後は勝手にしてくれ、といった形になることも。
・出来高(買い切り)
撮影したデータを送ったうえで、良い写真が多かったからこれくらいとか
この写真とこの写真を使うのでいくらとかの形式。
これも使用権だけか著作権毎か、といった違いはかなり大きいので
きちんとした話し合いが重要。
出来次第でもろに収入が変わるので
がんばって良い写真を撮ろう、というモチベーションへの影響は大きい。
・販売系(取り分)
自分の写真を販売等しているレイヤーさん等でたまにある形式。
売上の何十%がこちらの取り分、という変動制だと
けっこうな確率でもめる(売り上げをごまかしてたとか、後になって値切られるとか)
それだったら最初からこの作品集完成までで幾らとか
1日幾らでやった方がよほど良いのだけど、売れるかどうか分からないのに
最初にドンと支払うのはハードルが高いようで、たまにこの形式を打診される。
ネットコンテンツ等で販売している方だと
撮影自体は1年前に終わっているのに、今月も入ってくる、みたいな場合もあるので
その点はありがたい。
ただ、揉めやすさは相当なものなので、ある程度売れる見込みが付いた時点で
買い切りに移管
(今後は取り分は一切いらないので、今回これだけ支払ってもらえれば権利も譲る)
するのがお互いにとって吉
・販売系(主導)
こちらが販売作品を作るために、撮影可能なモデルさんを雇う形式。
取り分制はなし(ややこしくなるのが目に見えているので)
撮影内容、販売することなどを事前にしっかり伝え
同意書にサインしてもらったうえで、こちらがギャラを支払って撮影する。
揉めたくないので同意書などはしっかり作っておくこと。
上と同様、長期に渡って収入になるケースもあるが
最初にかかる費用を回収できないケースもある。
諸々で揉めるリスクがあるのでおススメはできない。
大まかにこんなところだろうか。
何度も言っているように、私は写真芸術家ではないので
カメラを操作して収入を得ているに過ぎない。
「カメラマンになるのが夢です!」とか
「もっと良い写真が撮れるようになりたい!」という方々からすると
何とも拍子抜けするかもしれないが、私はこれで満足している。
仮に月15万円の収入が最低限必要なら
1回1万円の仕事を月に15回する、3万円の仕事を5回する
あるいは5万円の仕事を3回すればいい、もちろん単価はもっと安くても高くても良い。
月30万円を目指す場合も同様で、単価を上げるか仕事量を増やせばいい。
別段難しいことは無いし、仕事さえ来るのであれば(有償で依頼されるのであれば)
写真の技術がどうという話でもない。
今のところ、特別に楽だとか大変だとかやりがいがあるとか無いとかは思わない。
依頼があれば、カメラを持ってあちこち行くし
無ければ自分で収入に繋がるような企画・撮影を考えるだけである。
車を運転するプロになりたい、と思う子どもがいたとして
F1ドライバーになろうが、WRCのラリーストになろうが
ハイヤーの運転手、タクシードライバー、路線バス、長距離バス、配送
長距離トラック運転手、色々な選択肢はあるし、貴賤はないのだ。
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