さて、まったく更新していないブログだ。
なぜ更新していないのか、と考えると
言うまでも無く、更新することが無いから、に他ならない。
カメラの話や撮影の話をしようと思っても
この間、あまり書けるような話は無かった。
依頼を受けて、新たなジャンルにチャレンジしてみたものの
まったく何をすべきか、 何がしたいか、が分からないまま
私は迷宮に入り込み、そのままパンクしてしまった。
元々、カメラが好きで撮影は好きではない、という人間だったが
どうも最近、撮影は苦手、に変わりつつある。
とはいえ、スポーツの方は相変わらずである。
D5のシャッター数がそろそろ60万に届こうとしているし
サブ使用のD850の方も10万を超えた。ニコンのミラーレスの噂にはワクワクしている。
ドールたちは元気だ。つまり、何も変わらない日常を過ごしている。
そんな中、先日ついに変化が訪れた。kurageさんとの3度目の撮影をしてきたのだ。
kurageさんとは5年前にとある手作りアート系のイベントで知り合ったが
そこから何度かイベントでお会いする以外は、基本的に連絡を取っていない
というより、連絡先も知らなかった。
ところが1年前にtwitterで突然つながったのだから、twitterは偉大だ。
それから何度かお話しさせて頂く中で、2回お会いし、撮影を行わせてもらった。
今年になってからは、天候や様々な理由も重なり
予定が2度ほど延びてしまっていたのだが、幸い今回3度目の再会、そして撮影となった。
ところで、kurageさんは、撮影者である。
イベント撮影や、アーティストさんの作品のブツ撮り
そして劇団さんのポスターやイメージビジュアルも手掛ける。
ハッキリ言えば、私よりよほど真剣に撮影に向き合っておられる方だ。
私は機材バカというか機材オタクというか
カメラやレンズについて調べたり考えたり、購入したり眺めたり触ったり
という事に関してはかなりの情熱を注ぐが、普段は撮影に関してはそうでもない。
スポーツ撮影に関しては、異常ともいえる情熱と集中力を発揮するが
例えば日常、お出かけの時にカメラを持って行ってスナップ撮影に勤しもうだとか
モデルさんを募集して、ポートレート撮影を頻繁に行おう、みたいなことはしていない。
それでも、kurageさんから、今度お会いする時撮ってください、なんて言われると
これはもう全力でがんばらねば!と思うのであった。
何と言っても、数少ないお友だちであり、カメラ以外でも色々と趣味が似ている部分もあり
お話ししていても楽しいのだから、その楽しい思い出に彩りを添え記録する意味でも
カメラという道具を使うには、十分すぎる理由と動機が存在するのだ。
基本的にポートレート撮影はあまりしない私でも
105mm f1.4みたいなレンズは持っているし、面白いレンズは気になる。
そんな私が以前手に入れたのが
ドイツのMeyer Optik Görlitz(メイヤーオプティックゴルリッツ)の
Primoplan 75mm f1.9 だ。
同社で有名なのは3群3枚のレンズで構成されたTrioplanで
特にTrioplan 100mm f2.8は代名詞的なレンズだ。
バブル(シャボン玉)ボケと呼ばれる丸い泡のようなボケで
この丸ボケに微妙に色が付き、光の状況によって雰囲気が変わる。
が、重ねて言うが、私の購入したのはPrimoplanだ。
繊細でクリーミーな描写がポートレートに向いていると言われるが
何より14枚の絞り羽根が、クリックのない絞り環によってぬるぬる動くさまは何とも可愛い。
そんなわけで、今回の撮影ではこれを使おう、と思った。
当然のごとくMFレンズであり、ボケの特徴を活かすにはやはり開放付近が使いたい。
(ちなみに羽根が多いので、絞った場合もボケ・光芒は綺麗だ)
75mm f1.9のMFレンズ、私の目で確実にピントが合わせられるかといえば難しい。
とはいえ、興味深いレンズがあって、素敵な被写体がおられるのであれば
使いたいのが人情というものだ。
もちろん保険も兼ねて純正の105mm f1.4、そしてこれもまたポートレート向けの
TamronのSP 45mm f1.8 VCを持って行くことにした。
45mmで手ぶれ補正なんて、と思う方もおられるかもしれないが
D850のような超高画素機は、何せ粗がめだつ。
ちょっと日陰で撮るシーンで、まあ大丈夫だろうと思ったショットが
拡大チェックしたら手ブレしまくり、なんてことがあると目も当てられない。
何せ今回はPrimoplanを使うので、こちらはピン甘写真を量産しかねないので
AFレンズは極力打率の高さを重視することにした。
前置きが長くなったが、ポートレート撮影である。
真夏の京都、なんと気温は39℃。
暑い、熱い、溶ける。人間も機材も持たないのではないかと思うほど。
太陽は、暑さ以外に、目もくらむような眩しさも備えている。
普段、体育館や自室でばかりカメラを触っている人間には色々と厳しい。
が、幸いなことにD5もD850も露出は信頼できる。
日陰や日向を頻繁に移動することを思えば、マニュアル設定より
絞り優先で行こう、と思えるのはPrimoplanも電子接点がありオートに対応しているからだ。
とはいえexifにはデータは反映されないのだが。
さて、着物で夏の京都での撮影だ。
輝くような華やかさを日差しで表現してどうたらこうたら
青い空と白い雲、そして着物が生み出す生命力がなんたらかんたら
と、あれこれ考えないでもないが、そもそも私と「元気」「生命力」というのは
ある意味で対極にあるようなものなのだから、無理はいけない。
kurageさんのお着物も紫を基調にした、落ち着きのある色合いなのだし
我々らしく、で良いじゃないか、と自分に言い聞かせる。
そんな折、kurageさんが、アーティストさん手作りの狐面を取り出した。
京都らしく、神社や鳥居もあちこちにある。
神聖な雰囲気と、眩しすぎる日差し、木陰に入るとガラッと変わる空気
そして着物姿の女性と狐面… なんだか、まるで現実と異世界の狭間にいるようではないか。
手にはPrimoplanのついたD5がある。
そして、暑さでふらつく頭… この非現実感はまるで白昼夢のようだ。
Primoplanの独特なボケは、崩壊ボケ、破綻ボケといえるようなもので
ピント面以外は溶け、千切れ、輪郭が消えていく。
まさに今の雰囲気を残すのにふさわしい。
あえてピントをちょっと外せば被写体も風景も、現実なのに
なぜか異世界に迷い込んでしまいそうな、不思議な描写になる。
背景がちぎれ飛んだような描写と、そこに浮かび上がる着物姿の女性
なんだか見てはいけないものを見たような世界が広がる。
しばらくはPrimoplanメインで撮影するが
軽く背面液晶でチェックしても、さすがにピンボケ率はそれなり。
Tamron45mmの柔らかい描写と、105mmの立体的で美しいボケ描写も使い、撮影を進める。
お昼、お茶と二度の休憩をはさみながら
先斗町など、少し場所を移動しながら撮影。
背景に他の人が写りこんだ率が高かったので、この点は色々と反省している。
だが、楽しい事に違いは無い。
好きな機材を、好きなように使いながら
素敵なお友だちと過ごす時間、これ以上望むことがあるだろうか。
あるとすれば、それは結果として良い写真が残せたか、という点で
個人的にはお気に入りもあれば、反省点も多い。
写真が上手くなりたい、と思ってカメラを使っているわけではないが
良い思い出を、より良い形で残せるように、努力はしなければならないな、と思うのであった。
素晴らしい時間をくれた、カメラ、レンズ、そしてkurageさんに感謝しつつ。
次回があれば、また楽しく過ごしたい。
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